大恋愛 泣ける 173
神様がくれた時間
蘇る記憶
『もう一度第一章から』を尚(戸田 恵梨香)に読んであげる真司(ムロ ツヨシ)
『その日、居酒屋はいつもより混んでいた。店長に席を開けてもらって、僕は、妻と二人並んで座った。アルツハイマー病に進行した事を宣告された夜に、一体何を食べたら良いのかも浮かばないまま、この店の扉を開けていたのだ。
店内を急がしそうに走り回っていた店長と女の店員が、億の方で何か話し始めた。ぼくらの席からは二人の声は聞こえない。すると、妻が彼らの口の動きに合わせて、語り始めた。”ごめんね面倒な病気になっちゃって。”僕は驚いて妻を見た。妻は構わず続けて語った。”ぜんぜん、全然平気””迷惑かけると思うけど”』
「一生懸命生きるからよろしくお願いします。」と、何かに騒われるように小説の続きを喋った(戸田 恵梨香)
驚いた真司(ムロ ツヨシ)は、思わず尚(戸田 恵梨香)の顔を覗き込んだ。
「真司、続き聞かせて」と、尚(戸田 恵梨香)は真司(ムロ ツヨシ)に向って言った。
『帰り道、やっぱり子供を産みたいと妻が呟いた。私達が愛し合ったという記録が欲しいと思ったようだ。人生は不思議だ。最悪の日に、最高の未来が見える事もある・・・』涙で読めなくなった真司(ムロ ツヨシ)
「やっぱり、真司は才能あるね。」と言う、尚(戸田 恵梨香)はまるで元に戻ったかのようだった。
「すごい」と、しゃべりにくそうになった尚(戸田 恵梨香)は言った。
真司(ムロ ツヨシ)は、おそるおそる尚(戸田 恵梨香)を引き寄せて抱きしめた。
「尚ちゃん」と、抱きしめ、泣き続ける真司(ムロ ツヨシ)
この日以来、尚(戸田 恵梨香)は、二度と真司(ムロ ツヨシ)の事を思い出すことはなかった。
尚(戸田 恵梨香)さんの、最後の悲しそうな顔が、燃え尽きましたと言ってるようですね。
尚(戸田 恵梨香)さんは、まるで最後の力を振り絞って真司(ムロ ツヨシ)さんの事を思い出した。それは、神さまが2人に与えてくれた最後のプレゼントだったような気がします。2人の演技力にが、奇跡を起こしたのかもしれませんね。